『傷寒論』 しょうかんろん
『傷寒論』しょうかんろん
著者: 張仲景(150~219年)
時代: 東漢末年
『傷寒論』は、『黄帝内経・素問』にある「熱論」を基礎にしたといわれており、「傷寒」、つまり外感発熱病を六経弁証という綱領にまとめたもの。
六経とは、太陽・陽明・少陽・太陰・少陰・厥陰で、それぞれの証に治療原則がまとめられている。
日本の漢方薬は、この『傷寒論』を元にした処方が多く、「経方派」と呼ばれる。
以下、『傷寒雑病論』の項で書いたものを再録しておきます。
六経弁証という弁証論治、綱領を最初に提示したもので、漢方薬の世界では、『黄帝内経』と並んで原典の一つとされている。
著者の張仲景は、その効果と業績により「医聖」と称される。
残念ながら本来の『傷寒雑病論』は散逸して現存していないが、その後、王叔和が『傷寒論』と『金匱要略』という二つに分冊してまとめ直した。現在手にする『傷寒論』はこちらの分冊したものとなる。
【参考図書】
『まんが黄帝内経』 張恵悌著
東洋医学・鍼灸の原典である『黄帝内経』は、前漢の時代に完成されたといわれており、その内容はとても深く広く、身体の生理学、病理学、治療学、養生学など、身体についての総合書となっています。東洋医学・鍼灸医療の理論背景には陰陽論、五行論などの中国思想が深く関わっていますが、そういった理論・思想を基盤にしながら徐々に身体と病気を理解し、医療として発展しました。2000年もの前にすでに医学として体系化されていたことには驚きに値します。現在も廃れることなく、東洋医学や鍼灸の臨床で頻繁に活用されており、現在でも“原典”として燦然と光を輝かせています。 伝統的な鍼灸をしている方はもちろん、現代的な鍼灸をしている方にとっても、東洋医学・鍼灸医学を志し、実践しているのであれば、原典中の原典であるこの『黄帝内経』を避けて通ることはできないと思われます。
しかし、『黄帝内経』の原著はもちろん当時の漢文で書かれており、かつ簡潔に書かれているため、初心者にとって最初から読むことは困難です。いきなり難解なものに手を出してこれはとても読めないと投げ出してしまうと、今後『黄帝内経』を手に取ることすらなくなってしまいますので、その前に、まずは古医書の考え方に馴染むことも、初期の段階では大切でもあります。この『まんが黄帝内経-中国古代の養生奇書』は、『黄帝内経』の基本的な考え方で、重要なものをわかりやすく漫画形式で描いてくれています。まずは楽しみながら親しんでみる、そしていつか原著を読む前の橋渡し役という意味では、なかなかの好著だと思いますので、初めて『黄帝内経』に触れる方にもお奨めです。 古医書医学を志す者としては、あくまで原著に当たれるようになることが、今後の心構えとして大切ですので、いつかはこの本は卒業し、徐々に原典に触れるように心がけておくとよいかと思います。
『新版 漢方の歴史』 小曽戸洋著 大修館書店
東洋医学はどのように誕生し、どのように発展していったのでしょうか?
東洋医学・鍼灸の源流は、言うまでもなく中国古代文明に端を発していますが、すでに前漢の時代に原典である『黄帝内経』が成立するという成熟と完成をしています。
その後連綿とその思想や技術が世代を超えて受け継がれ、さらに各時代の著名な医家によって発展を遂げ、我々はその恩恵を享受することができ、そしてまた今でも現在進行形で研究が続いています。
世界各国には古くから伝わる伝統医療と呼ばれるものが数多くありますが、その中でもこの中国発祥の東洋医学・鍼灸は、他の伝統医療よりも完成度が高く、地域や民族、時代を限定しない普遍性を有しています。そして伝統的であるから古くさいのではなく、現在においても、多くの人々の健康の維持や治療に貢献し、西洋医学の足りないところを補完するだけの効果を発揮しています。
今日においても医療として認められ、人々の健康に寄与している東洋医学・鍼灸・漢方薬。人類の歴史から見てもこれほどの長きに渡り利用され、今日もなお生活に根ざしている医療も稀有であります。
地域や歴史を超え、人類が受け継いできたこの医療は、いったいどのような歴史があるのでしょうか。一般に東洋医学・鍼灸は“伝統医療”という総称の一つに入りますが、本書では、今日も広く利用されている東洋医学の歴史を、成り立ちから発展、受け継がれ方、そして中国と日本の展開をそれぞれ分かりやすく解説しています。馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)から発見されたミイラのお話など、興味深いものもあります。東洋医学・鍼灸の歴史を学びながら、東洋医学の基本的な考え方にも触れることができる、コンパクトな良書です。著者は現在、北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部部長を勤める医学史のエキスパートですので、内容にも信頼性があるのでおすすめです。
本書の元は、1999年に発行されたものであります。ここで紹介した新装版は、新しい知見や図版、表などがつけ加えられたものです。購入するのであれば、こちらの新しいものをお薦めいたします。